いろいろ考えさせられた鉈切り丸 感想その1

【1鉈後の感想】鉈切り丸を思い出していると、全体が見える天井席にいても記憶に今あるのは主役がほぼ9割。仕方ない。わたしは森田さんに逢いに行ったのだから。それでも印象的なのは政子の美貌と建礼門院インパクトの強さ。あと知ってる役者さんなのに目立たなかったけど最後でえ〜となったのが景時。
そしてどう考えても一番の悪人は鉈切り丸じゃなくて〜生んだ人。母でなくて女だったんだな。あまり思い出したくないけどそれがこの舞台の背骨。


大河の清盛を見ていたおかげで頼朝の時代のことはなんとなくわかる。その父であり範頼・義経の父でもある義朝は玉木さんでイメージ固定している。たとえ気晴らしだけの関係でも身籠ったのは嬉しかっただろうと思われるしあの時代女性の出世とはそういうことだろう。なのに産んだ子に母が付けた鉈切り丸の名の由来を聞いて耳を疑った。あり得ない。しかも理由が残酷すぎる。生きる権利とかの正論を掲げる気はないけどそこが受け入れがたい違和感だったのかなと。それは後半まで伏せられていたのも衝撃を大きくした。自分の体験で、昔はこれ以上子はいらないからと何人目かに生まれた子にトメ(留めの意味)とかスエ(末)とかの字を入れた名前を付けたと聞いたことがあって酷過ぎると憤慨したのだけど。それをはるかに超えたあまりにあからさまな呪いの名前だ。しかも本人が呪ったと言うのだ。子を持つ母としてそんなこと全否定したいしそこを聞いてしまった鉈切り丸を全身で抱きしめたくなる。人としてちょっとは嘘ついたっていいはずなのにそれもしないって何?自分本位過ぎて最低だと延々呪いそう。ここまでの憎まれ役って見たことがない。母役のあの女優さんの演技も迷いのない熱演で素晴らしかったのだと思う。

この母親について観客がどこまで憎めるかは個人個人違うと思う。わたし自身も誕生を祝福されてはいなかった。姉がいたので次は男の子をと親も親戚一同も願っていたからだ。父にはしばしば男の子がいたらなという愚痴を聞かされた。太宰じゃないけどごめんなさいとしか思えなかった。卑屈な気がして言わなかったけど言わないとわからなかったのかもしれないと今頃思う。でも生活に困りもしなかったし言えば服もお菓子も買ってもらえた、学費も全部出してもらったという恩は感じてるから安心して成仏して下さい(笑)。
リチャード3世は取りあえず最後まで読んだけど途中女性の名前が混乱してきたあたりから斜め読みになって取りあえずエッセンスだけ感じた程度。本も舞台もどっちにしても血の繋がりがあっても天下を取るためには関係なく邪魔と思ったら消すという時代なのだと思っておけばいいようだ。範頼のこの話と史実のすり合わせはできない。政子がわざと嘘を書かせたから。そのあたりの説明的なシーンがちゃんと記憶にあるのは政子役の力量かな。大河の杏がやった政子もかなりかっこよかったけどこっちの政子も光っていました。